日記・趣味
Diary & Hobby
大学院入試に受かった日
2020年夏、大学院入試合格の連絡が来た。
駒場の素粒子論研究室からの連絡である。連絡が来たときはびっくりした。私はすっかり気分が良くなり、快晴の中、あわてて大学へと駆け出した。
友人に院試合格の報告(自慢)をしたあと、原子核実験のF准教授に会った。ちょうど私の親友の指導教員を務めている先生である。その先生と話したのは初めてだった。
写真では非常にやる気のなさそうな(目の死んでいる)人に見えたが、いざ話してみると非常にエネルギッシュな先生でびっくりした。その闊達な口ぶりで、Fさんは次のように語った。
「君、素粒子理論なんだ! 私が中学のころ、灘にいたんだけど、一個下に(素粒子理論をやっている)立川さんがいてね。その頃から彼は『中2にして量子力学を理解している』と、学内で有名だったよね。
その後、一緒に東大に行ったんだけど、その頃には私なんか比にならないくらい優秀だったよね。彼と一緒にいて「自分が素粒子理論に進んだところで、こんな人達に勝てるわけがない」と感じた。それで原子核実験に進むことにしたんだよね。——」
私は呆然とした。立川さんは、言うまでもなく日本を代表する物理学者の一人である。
自分はこれまで有頂天になっていた。しかし、難易度の高い大学院入試に一つ受かったからと言って、一体何だというのか。こんな天才たちと戦ったところで、勝ち目はあるのか。
大学院入試が終わったいま、今更研究分野を変えるわけにも行かない。——今後どうしようか。自身の将来に暗雲が立ち込める中、眩しい真夏の快晴だけが目に染みた。
(2022/3/28)